●今回、青野新社長就任にあたり、IRやM&Aの強化も行っていくとありますが、具体的に聞かせていただけますでしょうか?
M&Aはこれから積極的に行っていきたいと思っています。企業を買うという発想ではなく、スピード感をもって同じ志の人を集めることが目的です。先日、クロスヘッドさんの株式を13%ほど保有させていただきましたが、クロスヘッドさんには優秀な技術者が揃っていて、システム運用が強みです。ソフトを作れるサイボウズが、今後インターネットビジネスに進出するには、システム運用を強化する必要があり、資本提携を行うことによって事業スピードが早まると判断しました。
具体的にお話しますと、サイボウズはグループウェアだけでなく「サイボウズネット」というウェブサイトを開発しています。その中で「セミナーストリート」というセミナー開催を支援するサービスがありますが、人を管理したり、アンケートを取るなど細かい作りこみのノウハウをクロスヘッドさんに協力していただいています。
ですからクロスヘッドさんの場合、経営権などではなく、お互いの企業価値を高めるために提携しています。
●最近では、M&Aを繰り返して売上を拡大する経営手法が目立っていますが。
サイボウズの場合、企業の存在そのものが「お客様ベース」です。お客様を重視する上で、M&A先の経営権は大きな問題ではなく、お互いが納得して提携することが大切です。勿論、株主を無視するという意味ではなく、お客様を大切にすることが結果として株主や従業員を幸せにすると考えています。サイボウズが考えるM&Aは「志の一緒の人が集まる資本提携」で「愛あるM&A」と表現しています。
●株主の中には事業提携も良いが、急成長して欲しいという声もあるかと思います。そのあたりの戦略についてはいかがでしょうか?

サイボウズでは企業価値を「世の中に新しい価値を生み出すこと」と捉えています。M&Aで1+1が2になっても横ばいであって、新しい価値を生み出すことにはなりません。新しい価値を生み出すことが結果として売上、利益を上げることにつながると思います。数値ありきの足し算の経営はサイボウズのカルチャーには合致しないですね。
一方で急成長の必要性も認識していて、私が社長になるのも、その急成長を遂げるためです。「最近サイボウズが成長し始めたな」となれば、将来的に一部上場の話も出て来るでしょう。逆に現状のような年間10%の成長では、株主の期待に答えられていないと思っています。
●営業・マーケティングを担当してきた青野社長が就任されるということは、販売中心で業績をあげる意思表示と捉えてよろしいでしょうか。
そうですね。勿論、販売にはこだわっていきます。ただし私は元々技術者ですし、サイボウズは技術を大切にする会社でありたいと思っています。目先の利益を追うだけでなく、世界に通用する技術集団でありたいですね。
米国に拠点を出して初めて感じたのですが、米国でサイボウズを販売しても”日本のソフト”として相手にされなかったこともあります。テクノロジー勝負は本当にシビアです。
本来、日本は技術立国のはずなのに、ITではいつの間にか、米国のものまねをする国だと思われています。日本のベンチャーはアイデア勝負の会社が多く、テクノロジーで勝負できる会社が少ないからです。テクノロジーはインフラの部分だから、テクノロジーが強いと世界で通用することが可能だと思っています。サイボウズもテクノロジーで勝負できる会社にしたいのですが、残念ながらまだそのレベルには達していないと痛感しております。でもこれからですね。
●投資家の方々にも「テクノロジー企業」の視点で見てもらいたいですか?

そうですね。ただ一般にはマーケティングに注力している企業というイメージが先行していると思います。ここで唐突ではございますが、皆さんはサーカスに行きますか?サーカスでは、「ピエロ」と普通に「空中ブランコする人」がいますが、どちらの技術が上でしょうか?ピエロは落ちて、空中ブランコをする人は成功します。実は技術としては、ピエロの方が上なんです。なぜならピエロはあんなに動きにくいコスチュームを着ながらギリギリで落ちることができるからです。当然ピエロをする方は、実際成功することも出来ます。でもわざと失敗するんです。
つまり調整できることが一番のテクノロジーなんです。サイボウズにもピエロの要素を取り入れたいですね。一見バカッぽくて、親しみやすいんだけど、バックエンドのテクノロジーはきっちりしている。テクノロジーがしっかりしているから、使いやすくて親しみがもてる。こんな流れを作りたいですね。
●改めて会社のコンセプトは?
サイボウズの存在意義は、グループウェアを作って売ることでなく、サイボウズを使ったお客様が、「仕事が快適になりました!業務効率が改善しました!」と喜んでもらうことです。それを高めるには、ソフト作って売るだけではダメなんです。これからグループウェアを導入しようとしているお客様には、現状のサイボウズは機能が多すぎるかもしれません。そのようなお客様にとって、サイボウズのグループウェアを導入して、すぐに使いこなせることは難しいと考えると、単純にソフトウェアカンパニーというよりは色んな形で企業や担当者の方をサポートするサービスが求められているのかもしれません。
また将来的には、グループウェアをベースとして社会のインフラになりたいと思っています。グループウェアは人の予定や行動を把握するものです。つまり、生活ベースでの基本的な部分を押さえることができるものだと思っています。今後、サイボウズは携帯電話などを利用して、徐々に生活ベースでのサービスも提供していきたいと思っています。
●最後に新社長就任への意気込みをお聞かせ下さい。
日本発の世界に通じる「テクノロジー」カンパニーを目指して進んでいきます。