● 前回のインタビューから2年経ちました。第一次中期経営計画とあわせて、この2年間の変化をお聞かせ下さい。
当社は会社設立以来、ディーリングに代表される金融機関の戦略的収益業務をサポートするITの分野を「金融フロンティア領域」と呼び、この領域に特化したシステム開発(システム・インテグレーション事業:以下SI事業)を展開してきました。
第一次中期事業計画とは、2007年3月期を最終年度とする5カ年の中期事業計画です。最終年度の目標として、売上高60〜70億円、経常利益15〜20億円の業績目標を掲げてきました。前期2007年3月期の当社業績が売上高67億円、経常利益16億円でしたので、売上高、経常利益ともに第一次中期事業計画の目標を達成することができ、結果として当社は、金融フロンティア領域のNO.1システム・インテグレータに成長することができました。
そして今期より、さらなる成長を目指して新たな5ヵ年の中期事業計画、「第二次中期事業計画」をスタートしています。この点が2年前と比較したときの大きな変化だといえます。
● 会社自体の成長は数字にあらわれているかと思うのですが、実際にはどのように感じていらっしゃいますか?
2007年3月期において当社は、6期連続の増収増益を記録し、第一次中期事業計画を発表した2002年当時と比較して、この5年間で売上高が3倍程度、経常利益で4倍程度まで成長することができました。
外部環境をみると、昨今、銀行・証券会社などの国内金融機関も他の業界同様に、国内そして国際的な生き残りをかけて、収益力の強化が求められています。 そのため、金融機関の収益力強化につながるIT投資は中長期的には増加傾向にあり、今後も当社マーケットにおけるSI事業の需要は高まっていくと捉えています。
ただし、こうしたマーケット拡大に対して、SI事業の成長課題も存在します。
1つ目の成長課題は、SI事業の利益率向上が限界に達しているという点です。前回のインタビューでご説明させていただいた当社独自のビジネスモデルにより、業界における大手システム・インテグレータ(大手のシステム開発会社)の売上高営業利益率が概ね7〜8%なのに対して、当社は24%以上の高利益率を誇っています。
しかし、SI事業のような受託開発型のシステム開発は、顧客毎に個別にシステムを開発し納入するため、本来的には労働集約的な事業であり、エンジニア一人当たりの利益率向上には限界がある事業形態です。その中で当社は、様々な施策により、この問題を克服することで現在の24%もの利益率を達成しましたが、同時にこの利益率が限界に近い値であるとも感じています。
2つ目の成長課題は、優秀な人材の大量確保困難な状況が成長のボトルネックになっている点です。成長課題の1点目でお話ししたとおり、従来のSI事業ではこれ以上の利益率向上は困難なため、今後毎年会社が40%成長するには、5年後にはエンジニアの体制だけで社内社外、協力会社あわせて約1,000名体制を超えなければならない計算になります。しかも当社はノウハウを売りにしているので、ノウハウをもった人間を1,000名以上そろえるとなると、人材が逼迫しているソフトウェア業界では採用は厳しいと考えています。
そして3つ目の課題は、SI事業が売切型(フロー型)のビジネスのため、収益基盤が不安定であるという点です。SI事業は受注開発型ビジネスであり、短期的な案件の受注と納入の繰り返しを特徴とします。よって、毎期売上をゼロから積み上げなければならず、収益基盤が不安定となる特徴があります。
こうしたSI事業の成長課題を踏まえ、第二次中期事業計画では、さらなる成長を支える新戦略として、SI事業に加えてユニバーサル・マーケット・サービス事業(以下UMS事業)と呼ぶ新規事業を立ち上げます。UMS事業については、この後別途ご説明させていただきます。
● 新卒に対する教育や人材に対する思いや教育に対する考え方も含めてお聞かせ下さい。
当社は経験者採用、新卒採用ともに積極的に行っていますが、特にここ2、3年は新卒採用に力を入れています。新卒採用を開始した5年前には数名の採用にしか至りませんでしたが、年々確かな手ごたえを感じてきています。昨年の4月に16名、今年の4月に26名の新卒者が入社しています。来年はさらに40名を確保したいと思っています。
当社の新卒採用では、学生時代にコンピュータ・サイエンスやファイナンスの知識をどれだけ習得しているかを採用の基準としていません。基準としているのは潜在能力の高さです。可能性という面から、中途半端な知識や固定観念などがありがちな経験者よりも、まっさらな新卒者の方が、同じスタート時点であれば、成長率ははるかに高いと経験から学んでいます。そして、当社はそういう人材を可能な限り高く伸ばすことのできる仕事とチャンスがあります。
当社は、2005年9月1日に東証一部に上場しましたが、設立後まだ10年しか経っていない若い会社です。そういった意味でも、新卒社員は当社の成長ドライバーとなり、当社のカルチャーを築いていく重要な存在となっています。新卒社員の数がこの調子で増えていけば、新卒採用費用にも規模の経済が働き、採用コストも相対的に逓減すると考えています。
また、現在の景気の回復基調に伴って、優秀な人材の採用が困難になりつつあります。こういった景気の動向に人材採用がなるべく左右されないためにも、継続的な新卒採用とその育成は非常に重要だと考えています。
● シンプレクスブランドの浸透状況はいかがでしょうか?
シンプレクスブランドは業界でかなり浸透してきたと思っていますし、当社の知名度も高まっていると感じます。当社の顧客は証券会社が中心ですが、当社の主力事業であるディーリングシステムのうち、債券フロントシステムについては、大手総合証券10社中9社で採用されています。残り1社に関しても、債券フロントシステムではありませんが、子会社において当社のシステムが採用されているので、業界のシェアはほとんど押さえられているといえます。最近では大手ネット証券との取引も広がりを見せています。
営業面でもお客様側から引き合いをいただくケースが非常に多いです。2年前と比較して当社の売上高は2倍近く伸びていますが、それに比例することなく、営業部門の規模は当時から変わっていません。会社としてのブランド形成が成功している結果だと捉えています。
都市銀行・信託銀行への本格進出を実現した点も特出すべき点です。当社の顧客セグメントのほとんどが証券会社であったため、マーケット規模の拡大や特定マーケットへの事業依存リスクなどの点から、都市銀行・信託銀行への進出は重要な課題でした。こうした課題を克服すべく、これまで着実に実績と信頼を積み重ねてきた結果として、2007年3月期には、既存顧客であったメガバンクから大型案件を獲得できるまでになり、さらには新規顧客となるメガバンクからも開発案件を獲得することができました。