1.1 信用取引とは
信用取引とは、証券会社から資金や株券を借りて取引をする制度のことです。投資家は、証券会社に委託保証金や代用証券を預けることにより、資金の数倍の取引を行ったり、株券を借りて、売りから取引を始めたりすることができます。より大きなリターンを望める反面、リスクも大きくなる取引です。
信用取引の特徴
- 資金の数倍の買い付けが可能な取引。
- 株券を借りて売ることが可能な取引。
- 委託保証金か代用証券を担保に入れる必要がある。
- 一般信用と制度信用がある。
- 取引の度に、金利や品貸料を証券会社に支払う必要がある。
1.2 信用買いと信用売り
信用取引を用いてできることは、大きく分けて2種類あります。それは「信用買い」と「信用売り」です。
A. 信用買い(空買い)
信用買いとは、担保を入れることで、投資資金の3倍近くの金額で株式を買うことができるものです。信用取引では、委託保証金を証券会社に預けることで、その何倍もの金額を取引することが可能になります。例えば委託保証金率が30%の証券会社の場合、30万円の資金で100万円の取引ができるということになります。
B. 信用売り(空売り)
信用売りとは、一定の証拠金を用意して株式を借り入れ、その株式を市場で売ることができる制度をいいます。下がりそうな銘柄の株式を借りて売却し、株が下がった後で安く株を買い戻すことで利益を出すことができるようになります。信用取引の一番のメリットは、この「株式投資で売りから入れる」という部分ではないかと思います。現物取引だけでは下落相場で利益を出すことは難しいですが、下落相場でも利益を出すチャンスが増えるといえるでしょう。
1.3 差金決済と現物決済
信用取引で株を購入、または信用売りをした場合、反対売買をして決済をしなければなりません。現物取引では自己資金で株式を買うので、その株式を売った売却代金をそのまま受け取るという形になりますが、信用取引は顧客と証券会社の間で評価損益をやり取りする「差金決済」が一般的です。また、借りた資金相当の資金や、借りた株式相当の株式を証券会社に差し入れる「実物決済」という方法もあります。ここでは、以上の2点を解説します。
A. 差金決済
差金決済とは、反対売買をして差額を受け渡す方法です。大体の場合、信用取引の決済は差金決済で行われます。信用買いをしている場合には、担保となっている買付株券を売却します。信用売りをしている場合には、担保となっている売却代金で株券を買い戻します。この反対売買により発生する差損益を、顧客と証券会社の間で授受する方法が差金決済です。
B. 実物決済
実物決済とは、証券会社から借りていた資金や株式をそのまま返済する方法です。実物決済には現引きと現渡しという2つの方法があります。
・現引き(げんびき)
信用買いのために借りた、買付代金相当の現金を証券会社に渡して、担保となっている買付株券を受け取ることをいいます。
・現渡し(げんわたし)
信用売りのために借りた株券と、同種同量の株券を証券会社に渡して、担保となっている売付代金を受け取ることをいいます。
1.4 制度信用と一般信用
A. 制度信用取引
制度信用取引は、証券取引所が期限や金利などを定めた信用取引のことをいいます。東証なら日本証券金融、大証なら大阪証券金融に、資金や株式を借りて信用取引を行うことになります。制度信用取引には6ヶ月という期限が設定されており、期限内に反対売買か現引き、現渡しをすることにより決済をする必要があります。信用売りが可能な銘柄は、制度信用銘柄の中でも限られたものになります。一般的に信用取引といった場合、この制度信用取引のことを指します。
B. 一般信用取引(無期限信用取引)
一般信用取引は、投資家と証券会社で期限や金利などを自由に設定できる信用取引のことをいいます。松井証券の無期限信用取引などがこれに当たります。制度信用取引と違い、反対売買までの期限がありません。また、制度信用取引では扱っていない銘柄を取引することが可能です。ただし、証券会社が売買を規制している銘柄については、売買することはできません。期間が決められていないため、金利が制度信用取引より高いので、特別な事情がない限り制度信用取引を利用することが多いようです。
1.5 担保の種類と特徴
信用取引では資金や株式を借りて売買することになるので、当然それらを借り入れるための担保が必要です。委託保証金と代用証券について解説します。
A. 担保の種類
・委託保証金
委託保証金は「現金の担保」という意味です。証券会社に現金を預けることにより、委託保証金として扱われます。
・代用証券
代用証券は「有価証券の担保」という意味です。担保は現金以外にも、株券や国債、投資信託、EFT、REIT、上場転換社債などで代用できます。ただし、これらは現金と同じ条件で担保に出来るわけではなく、その有価証券の何割を担保として評価するかという割合が設けられています。これを「掛け目」と呼び、その割合は証券会社や銘柄によって異なります。上場株式であれば、掛け目は通常株価の80%となります。
B. 委託保証金について
信用取引を行うために、最低限必要な担保の額や割合が定められています。
・最低委託保証金
信用取引をする際に必要な資金の下限のことをいいます。委託保証金が最低委託保証金を下回っている場合は、信用取引ができません。最低委託保証金は証券会社がそれぞれ定めています。ただし、法律によって「最低委託保証金30万円」と制限されています。
・委託保証金率
信用取引を行うときに、証券会社に預託する保証金の、信用取引可能額に対する割合のことをいいます。委託保証金率は証券会社がそれぞれ定めていて、30%〜50%となっています。ただし、法律によって「委託保証金率30%以上」と制限されています。
・最低委託保証金率
証券会社に預託する保証金の、信用取引可能額に対する最低の割合のことをいいます。保有銘柄の値下がりなどで、最低委託保証金率を下回ると、「追加証拠金(追証)の差し入れ」をしなければなりません。最低委託保証金率は証券会社がそれぞれ定めていて、20%〜30%となっています。ただし、法律によって「最低委託保証金率20%」と制限されています。
2. 信用取引のリスクへ
|